書評:『なぜフランスでは子どもが増えるのか』

なぜフランスでは子どもが増えるのか -フランス女性のライフスタイル (講談社現代新書)

なぜフランスでは子どもが増えるのか -フランス女性のライフスタイル (講談社現代新書)


フランスは出生率が高い先進国として知られています。
2009年には出生率が2.02となり、欧州トップの座を堅持。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2558071/3684437
少子化対策に取り組む日本としてはお手本にしたいような国。



ではなぜフランスでは出生率が高いのか?
こちらの記事(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1661)では、?保育所の充実、?婚外子出産の容認、?40歳以上出産の増加の三つをその理由に挙げています。しかしこの本の著者によれば、フランスで子どもが多く産まれる理由の本質は「女性の自由が尊重されていること」にあるといいます。上記の三つの理由は、女性の自由を尊重した結果として生まれてきた社会制度(社会現象)であるにすぎない。


例えば、

?フランスでの避妊はピルが主流。つまりフランス女性は、自分の身体(性)は自分でコントロールするという意識が確立されている。

?フランス女性は子どもを産んでも「母」であることより「女性」であることを求められる。歳を取っても色気を意識した服装は当たり前。

?子どもがいても、子どもを知人に預けて夫婦どうしでデートや旅行に出たりするのは日常茶飯事。そのための「乳母制度」がフランスでは今でも息づいている。

?フランスでは「ミクシテmixite」(=混合性)の文化が伝統的にある。つまり、異性同士が一緒にいる伝統。フランスでは同性どうしよりも異性どうしの方が結びつきが強い。

?フランスには「専業主婦」はほとんどいない。家事や子育てばかりして家に閉じこもっている女性は無能な女だと思って馬鹿にされる。たとえ母親であっても男性と同等に働くことを良しとする文化がある。

?養育費・教育費の負担が少ない。小学校から大学までほとんど授業料は無料。日本のように受験のために塾や予備校に通わせる習慣もない。

?婚外子の割合が高い(51.6%!)。これは、フランスでは結婚していなくても税制や社会保障上の不利がほとんどないため。「パクスPACS」と呼ばれる「連帯民事契約」も普及している。


つまり著者によれば、「フランスで子どもが増える理由は、女性の自由を尊重し、カップルの生活が充実し、女性の性にまつわる不利を改善し、母親の負担を軽減した結果である」。それゆえ、ただフランスの社会制度をまねてそれを日本にそのまま輸入するだけでは、日本の出生率は上がらないだろう、と著者は予想する。重要なのは、それらの社会制度の背景にある「女性の自由を尊重する」という文化や価値観のほうなのである。


◆フランスの合計特殊出生率2.0に回復 - [よくわかる政治]All About
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20080827A/