ネット社会は過去志向型カルチャーを生み出す。

 最近は少しずつ吉田拓郎やら中島みゆきやらユーミンやら、昔の歌謡曲をよく聴くようになってきた。洋楽にしてもビートルズとかビーチボーイズとかカーペンターズとか古いのばっかり聴いてますね。今のJ-POPや洋楽が楽しくなくても、過去のアーカイブに簡単にアクセスできる時代なのがありがたい。

 逆にこれで過去のアーカイブに簡単にアクセスできない状況だったら退屈すぎて死んでたかもしれません。あるいはもっとニッチな最新バンドを頑張って追いかけてたりしたのかな。単に自分が30過ぎておっさん化してるだけかもしれないし、よくわかりませんが。

 映画とかにしても、近所のレンタルビデオ屋に行けばいつでも過去の名作を200円とか300円で借りて見られる環境って素晴らしくないですか。極端に言えばもう新作映画とか全然入ってこなくても過去のアーカイブを順番にチェックしていくだけでも十分残りの人生潰せそう。

 人文書もとりあえず古典に手軽にアクセスしやすくなってる環境がありがたいなと思うことが多い。読みやすい新訳と綺麗な装丁と手頃な価格で古典・名著に触れやすくなってるよね。貴重な古本もネットで手に入りやすくなったし。新刊の人文書で面白いものが少ないというのはまぁその通りだと思うけども。

 というわけでネット社会では新しいものの創造へ向かうよりも、むしろ過去の名作アーカイブを検索&チェックする方に流れがちだよなぁというのが最近の印象。なぜならそちらのほうが安価で手頃に良質な作品に触れられる可能性が高いから。

あと前から思ってるんだけど、YouTubeって未来を向くのではなくて、むしろ過去を振り返るのに適したメディアですよね。YouTubeでアーティストの新譜を聞く機会よりも、過去のアーティストの曲を聞く機会のほうが圧倒的に多い。

 なのでYoutubeに浸っているとどんどん過去志向になっていって、あんまり未来に志向(思考)が向かわない。いやーもうすでに十分、一生楽しめるだけのアーカイブあるじゃん、みたいな感じで。新しいものを欲する欲望が薄くなるんだよね。過去のCDとか本を買いたくなるときはあるけど。そして古いCDや本はたいていAmazonの中古で安く買える、という素晴らしきネットデフレ社会。

 そんな風にして文化って後ろ向き(懐古的)になって衰退していくんですかねー。いやどうなんだろう。インターネットが普及することで、ここからドンドン新しい価値や文化が生まれてくるよ!という言説って10年くらい前まではよく見かけたけど、いやあんまりそんな風になってないんですけど…、むしろどんどん懐古主義的・過去志向型のカルチャーのほうに関心が移ってる気がするんですけど…、というのが個人的な印象。

というわけで最近よくYouTubeで聴いている曲を。