映画感想「ノルウェイの森」


もともと原作ファン、というか村上春樹ファンなので観に行くつもりなかったのですが、周囲で聞く評判が意外に良いものばかりなので、気になって観に行ってきました。結論としては、「悪くなかった」です。点数つけるなら65〜70点くらい?


<良かった点>
・映像の美しさ
・60年代当時の服装・髪型・大学・寮などの再現力
・全体的に小説の雰囲気をうまく再現できている
・ワタナベ役の松山ケンイチ
・永沢さん役の玉山鉄二
ジョニー・グリーンウッドRadioheadのギター)の無気味な音楽


<イマイチだった点>
・直子役の菊地凛子が個性強すぎる。直子はもっと透明感のある役柄であって欲しかった。あと最初から最後までメンヘル系女子として描かれているところに違和感があった。前半では美しい&可愛らしい直子の姿も描かないと、なぜワタナベが直子に惹かれるのかが分からなくなる(もともと原作でもよく分からないんだけど)。

・緑役の水原希子の演技。水原希子は可愛いんだけど、セリフがすべて棒読み&無感情なのは頂けない。この物語のなかで緑は「生」の象徴なので、もっと明るく個性的でワタナベをかき回すキャラクターでないとダメだと思う。この映画では登場人物がみんなクールで感情を露にしないキャラクターとして描かれているが、それは失敗なのではないか。

・レイコさん役がキレイすぎる。レイコさんはもう少し歳をとって(白髪混じり)ブサイクな人がよかったと思う。最後にワタナベがレイコさんと寝る場面の解釈にも違和感があった。映画だと完全にレイコさん自身の傷を癒すために二人が寝たということになっているが、それは解釈が違うと思う。あのシーンは、お互いが直子が死んだ傷を癒し、これからもこの世界で「生きていく」ための儀式として描かないとダメなんじゃないか。



というわけで、全体的な雰囲気の描き方と主人公役の松山ケンイチの演技が良いので、その時点で僕のなかでは合格点に達しています。その二つが映画化にあたって一番難しいと思われていたポイントなので、そこをクリアしてきたのは素晴らしい。これだけで映画化に挑戦した価値はあったと言っていいと思います。

いっぽうでイマイチだと感じたのは、直子・緑・レイコさんという主人公を取り巻く三人の女性の描き方。配役・演出・演技、それぞれに違和感がありました。しかしこれはあくまで僕のノルウェイの森解釈と異なるというだけで、他の人から見れば「配役も演出もぴったり」ということはあるかもしれません。個人的には、直子役を水原希子がやって、緑役を菊地凛子がやったら良かったと思うんだけど、どうでしょう。菊地凛子のあの個性的な顔と演技は、直子よりも緑のほうが合ってるんじゃないかな。

予想されたことではありますが、映画観終わったあとから「ノルウェイの森」が頭の中で鳴り止まず、家に帰って久しぶりにビートルズの「赤盤」を引っぱり出しました。


The Beatles 1962-1966

The Beatles 1962-1966