映画感想「アンストッパブル」

昨日観てきました。
これほどストーレートで潔いアクション映画は久しぶりに観た。
余計なエピソードとか伏線とか一切なくて気持ちいい!


大量の化学薬品を積んだ超重量級の貨物列車が無人で暴走。さあこれをどう止める?
という単純明快なストーリー設定だけできっちり2時間。いやー潔いね。
なんとなく今は懐かしき「スピード」を思わせる設定ですね高校生の頃に観た)。「スピード」もすごく面白かったけど、個人的にはバスを降りてからのくだりが「スピード」に欠けている気がして興ざめだったんだけど、この映画の場合は後半にそういう興ざめ部分がなかったので良かったです。


デンゼル・ワシントン演じるクールなベテラン機関士とクリス・パイン演じる血気盛んな新人車掌のコンビもベタだけどいい感じ。特にデンゼル・ワシントンって久しぶりに見たけど、円熟の演技ですね。やっぱり、ひとつの道を極めたプロ(職人)はカッコイイっす。ということをデンゼル・ワシントンの役柄に関しても、デンゼル・ワシントン自身に関しても感じた一作でした。



それにも通じるけど、この映画のテーマは「現場のプロの底力とチームプレイ」だと思う。
この映画の主役はもちろんデンゼル・ワシントンクリス・パインなんだけど、暴走列車を止めるのは二人の力だけではない。二人の行動を裏方で支える運行センターのチーフやオペレーター、技術系の専門家などのチームプレイが描かれている。職種も人種も性別も年齢も超えて、多様な人々がひとつのミッションに立ち向かっていく様子が「ザ・アメリカ」な感じなだなぁと。その状況をリアルタイムでテレビの前で応援する人たち(アメリカ国民)の熱狂ぶりとかも、いかにもアメリカン・ナショナリズムな感じ。


他方で、この映画の裏テーマは「いつも首切りを恐れながら働いている労働者たち」の姿。
現場でミスをしたり、上司の意向と違った判断をしようとするたびに「これでクビになってしまうのではないか?」という迷いが頭をよぎる現場の人たち、安い賃金で雇われる若者に職を奪われているという恨みをもつベテランの働き手たち、現場の事情を理解せず机上で判断を下そうとする上層部、人命の危機よりも株価の値下がりを気にする幹部層。最近のアメリカ(というか日本を含む先進国全体)の労働現場を象徴的に表していた気がします。で、この映画は「人の命よりも株価の値下がりを気にしたり、現場を見ずに会議室で物事を判断する上層部なんてクソくらえ、現場のプロの底力とチームプレイを見やがれ!」というメッセージになっているのではないか。


もちろん最初にも書いたように、この映画は難しいことを考えずに単純明快に楽しめるアクション大作なんだけど、裏を読むとそういうアメリカ社会の現状みたいなものがあるのかなと思いました。そんな理屈っぽいことは抜きにしても単純に面白いアクション映画なんで、そういうの好きな人は是非!




映画の作り手たちもプロ(職人)ですね。