映画:『グッバイ、レーニン!』
- 出版社/メーカー: グラッソ(GRASSOC)
- 発売日: 2004/10/16
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主人公アレックスの母クリスティーネは東ドイツ国に奉仕する純粋な社会主義者。
その母がデモ中の事故で意識不明の重態となり、病院に担ぎ込まれる。母が意識を取り戻さないままにベルリンの壁が崩壊し、その後東ドイツは急速に資本主義化していく。
市場経済の導入によって街の光景が一変した頃、クリスティーネが突然意識を取り戻す。息子たちは母親に東ドイツの変貌を悟らせないよう奔走するのだが…
というストーリー。
すごくいい映画でした。
まず東ドイツを舞台にした映画というのが珍しいし、ベルリンの壁崩壊前後での東ドイツの激変ぶりが描かれていて興味深い。
クリスティーネが社会主義の布教活動を熱心にしていた頃には、家の向かいのビルに共産主義を象徴する赤い垂れ幕がかかっていたのに、彼女が目を覚ますとそれがコカコーラの赤い垂れ幕に変わっているとか、いろいろウィットに富んだ仕掛けがしてあかっておかしかった。クリスティーネに体制変革を気付かせないようにするために、アレックスが友達と一緒に偽のニュース番組を作って流すとかね。その息子の懸命さが泣ける。
こういう話がコミカルな映画になってしまうというのは、ある意味東ドイツでかつての社会主義を懐かしむ空気があるからなんだと思う。現在のロシアでも、市場経済の導入によって貧富の格差が広がり、かつての社会主義体制を懐かしむ人々が増えているというドキュメンタリーを去年NHKがやっていたけれども、かつての社会主義国の一部でそういった感情を抱く人々が増えてきているということなんだと思う。
もちろんそれは彼等が単純にかつての体制昔に戻りたいと思っているということではなくて、この映画のタイトルにもある通り、かつての社会主義(その象徴としてのレーニン)を懐かしく振り返りつつ、それに別れを告げる、という作りになっているわけですが。
映画の最後に、ヘリコプターに吊された巨大なレーニン像が主人公の前を通り過ぎていくシーンは印象的ですが、こちらに手を差し延べつつ、ヘリコプターに運ばれていくレーニンは妙に愛嬌があって、同時にどこか哀愁が漂っています。
かつての社会主義を懐かしみつつコメディーのネタにするという、絶妙の距離感で描かれているところが素晴らしいなぁと思いました。
一見の価値ありの映画だと思います。