書評:『世界大不況からの脱出』

世界大不況からの脱出-なぜ恐慌型経済は広がったのか

世界大不況からの脱出-なぜ恐慌型経済は広がったのか


これを読むと、クルーグマンがリフレ政策を捨てた、などという池田信夫の評論が間違いであることがよく分かります。(繰り返し使われているベビーシッター協同組合の例がその根拠)


クルーグマンの考えは正当派ケインジアンらしく、いたってシンプル。
不況の時には、
①まずは、大規模な財政支出&利下げ
②それでもダメなら、さらなる金融緩和政策(公債・株式の買い取りなど)
③それでもダメなら、リフレ政策(インフレ・ターゲット)
というものです。


この本では日本のバブル崩壊アジア通貨危機サブプライムローンバブル崩壊まで20年間にわたる世界経済の金融バブルの動向を解説。
非常に分かりやすかったです。


クルーグマンは、サブプライムローンバブル崩壊への警告は、10年前のアジア通貨危機のときにすでに発されていたはずだと指摘。
たしかに、そりゃそうだ。アジア通貨危機のことなんてもはやほとんど忘れ去れているけど…
また現在のアメリカ経済が陥りかけている「流動性の罠」は、バブル崩壊後の日本経済が典型的に陥っていた状況であることも指摘。ここからも十分な教訓が引き出されていないと。


過去のさまざまな事例に学びつつ、シンプルな理論をつかって、現状への処方箋を提出するクルーグマンの姿勢には共感がもてます。
さすがは世界一流の経済学者。
この20年間の世界経済の動向がまとめて分かる一冊です。