書評:『ヤクザと日本』

ヤクザと日本―近代の無頼 (ちくま新書)

ヤクザと日本―近代の無頼 (ちくま新書)

日本が近代化する過程のなかで、「ヤクザ」という組織がどのように発生し、どのように発展し、そしてどのような役割を担ってきたのか、を解説した一冊です。
これは面白かった。


筆者によれば「近代ヤクザ」とは、
「明治になってからの社会の大きな変動のなかで、沖仲仕、船頭、鉱夫、土工、人夫などと呼ばれた下層労働者が、生きんがために寄り集まって自然発生的につくった<組>が発展したもの」
だそうです。ふむふむ。


要は、近代初期における下層労働者たちの「労働組合」みたいなところからヤクザは発展してきたということですね。
ある意味では、昨今の非正規雇用労働の人たちが陥っているような状況を防止するために「ヤクザ」という組織が存在していたとも言えるかもしれません。


日本の近代化を見えないところで支えてきたのが、ヤクザという「非近代的」な組織であり、ヤクザなしには日本の近代化はあり得なかった、というのがこの本の主張。


その他にも、ヤクザと芸能のかかわり、ヤクザ界における「義理と人情」「顔と腹」「親方・子方関係」、山口組概略史など内容もりだくさんです。
日本の裏社会を知りたい方へ、オススメです。