「ネットがあれば政治家いらない」 東浩紀「SNS直接民主制」提案
先週の朝生に東浩紀が出演し、「SNS直接民主制」を提案したことがネット上で話題になり、様々な反響を呼んでいる。
◆「ネットがあれば政治家いらない」 東浩紀「SNS直接民主制」提案
http://www.j-cast.com/2009/10/24052476.html
番組のなかで東浩紀は
「基礎自治体(市町村)のいくつかなんて、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で運営すればいいと思う。ミクシイとかで」
とか
「(18世紀の社会思想家で、直接民主制を主張した)ルソーのころのジュネーブの人口は2万4000人だったが、これぐらいだと直接民主制ができる。しかも僕たちには今、SNSやツイッター(Twitter)というのがあって、たとえば勝間(和代)さんやホリエモン(堀江貴文さん)は、ツイッターでフォロワーが15万人もいる。1人のサービスを15万人がフォローしていて、しかも勝間さんや堀江さんはそれに(レスポンスを)返している。そういうことができるインターネットというテクノロジーは、10万人とか5万人という規模だったら、直接民主制を可能にするんですよ」
といった発言を行い、これが東浩紀のTwitterを媒介にして議論を生んでいる。
☆東浩紀のTwitter
http://twitter.com/hazuma
☆朝生後のTwitter上での議論まとめ
http://togetter.com/li/399
Twitterを使ってここまで議論ができるものなんだと少し感心。
僕自身がTwitterを使ったことがないので実感ないけど、このお祭りはちょっと面白い。
個人的にはSNSやTwitterを使った直接民主制なんて気持ちわりぃー、と思いますが。
しかも東浩紀はここでルソーの一般意志という概念を持ち出してきていて、それを「一般意志2.0」と名付けている。現実的な有効性としては結構おそろしい話だと思うけど、アイデアの出し方はさすがというか、興味深い。
詳しい説明は省きますが、ネット上でいろんな人が勝手なことをTwitterやSNSを使ってつぶやいていれば、Googleのようなソフトがその声を検索・集計して、自動的に「一般意志2.0」とも呼ぶべき集合知がアルゴリズム的に生成されてくる、というイメージです。
ルソーは「一般意志」を個別意志の総計である「全体意志」とは区別して使っていて、「一般意志」は個々の人間が公共的な場で公共的な議論をすることによって形成される「合意」のようなもの(全体意志)ではないという。そうではなく、ルソーのいう「一般意志」とは個々の人間が普通に生活を営んでいるだけで自動的にに生成されるような共通の「意志」のようなものである。
しかしルソーは『社会契約論』のなかでその「一般意志」がどのようなプロセスによって生成されるのかということをはっきりと書いてはいない。あげくのはてには一般意志が形成されるには「神々の知性が必要である」なんてことをルソーは書いていたりする。そのためこの点(どうやって一般意志は形成されるのか?)が、ルソー社会契約論の重要な問題点とされてきた。
しかし、現代に生きる我々にはインターネットというツールがある。
SNSやTwitterというコミュニケーションツールを介した人々の意見をGoogleによってアルゴリズム的に集約すれば、自動的に「一般意志」が出来上がるではないか!というのが東のアイデア。イメージとしては、映画『マトリックス』のなかですべての人間の脳が巨大コンピューターに繋がれてコントロールされている図に近いのかも(これは喩えとしてあまり良くないのかな)。
なんだかSF小説のような話で、そんなポリティカル・サイバースペースが自分が生きている間に誕生しようとしているのなら空恐ろしい話だと思います。怖いもの見たさで体験してみたい気もしますが。
まぁさすがにその方法だけで政治を行うのは無理だと思うのですが、一定の制限つきでSNS直接民主制的なものが機能するのは面白いかもしれません。むしろ「大文字の政治」の外でそういう「小文字の政治」が機能すればいいのかも。