書評:『トヨタの闇』

トヨタの闇

トヨタの闇

年間利益2兆円、自動車販売台数世界第2位と日本企業のトップを走るトヨタ自動車ですが、実はその高収益の裏には多くの闇が隠されている、という内容の本です。
これまでタブーとされていたトヨタ批判に正面から切り込んだ、
ということで話題になっているようです。


その「闇」の具体的な中身はといえば、
・実は過労死や自殺者がかなり多い。
・リコール件数が業界断トツ1位。
 (04・05年は販売台車数よりリコール台車数の方が多かった)
・下請け会社を不当にイジめることで本社の好業績が成り立っている。
・世界45ヵ国で「反トヨタキャンペーン」が実施された。           etc  


これらの問題は、まぁどの会社でもつっつけば多少は出てくるんじゃないの、という感じの「闇」たちで、それ自体はさほど大きな問題ではありません。
この本が提起している「闇」の本質は、もう少し深いところに根があります。


それは、こういったトヨタにとって都合の悪いニュースが、
テレビ・新聞・雑誌などの大手メディアの報道に決して上ってこない、ということです。
なぜか?


それはトヨタがこれらの大手メディアにとっての大スポンサーだからです。
トヨタは各メディアに対して日々莫大なCM・広告を打ち、多額の広告料を支払っています。
大手メディアからしてみれば、トヨタは莫大な広告収入をもたらしてくれる大事な「お客様」。
そんなトヨタを批判する報道をすれば、トヨタは間違いなくCM・広告を全面的に引き上げてしまい、自社の経営が苦しくなるのは目に見えています。
故にどのメディアも、トヨタにとって都合の悪い報道を自主的に控えるようになっていく。
かくてトヨタの「闇」は温存され、トヨタにとって都合の良い報道ばかりがなされるようになる、というわけです。


ちなみにトヨタの広告宣伝費は年間1054億円!(2007年3月期)だそうです。
2位:松下電器(831億円)、3位:本田技研(815億円)をぶっちぎりで抑えて、
国内企業トップの座を10年以上保持。すげー。


この莫大な広告料は、メディアの視聴者・読者に対する宣伝費であるとともに、
各メディア媒体に対する「口止め料」でもある、というわけですね。


トヨタ自動車が良い会社なのか悪い会社なのか、という議論をする前に、
マスコミの報道はそういう仕組みで成り立っているのだ、
だからマスコミの報道をすべて信用していてはいけないのだ、
というメディアリテラシーを持つことがいちばん重要なことだと思います。