書評:『自由は定義できるか』
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2007/09/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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⇒定義できない、が答え。
なぜなら、これが「自由」だ!という定義をしても、その定義では「不自由」だ!という抗議が
必ず生じてくるからです。
「自由」を尊重する立場であればあるほど、この抗議に反対することはできません。
なぜなら、なにを「自由」と定義するかは、まさにその個人の「自由」だからです。
このようなジレンマのなかで、なにを「自由」と定義するかは至難の業です。
それゆえ、なにを「自由」とするかについての終わりのない議論が延々と続くことになります。
「これこそが自由だ!」という絶対的な正義をかかげて、それに反対する人々を無理やりに押さえつけようとすると、究極の「不自由」=全体主義(ファシズム)が生じてくる、というジレンマもあります。
この本では、以上のようなジレンマのなかで続けられてきた、近代哲学/現代思想における「自由」をめぐる議論の軌跡を、分かりやすくまとめてくれています。
おきまりのホッブズ、ルソー、ロックから始まって、アダム・スミス、マルクス、ハイエク、フリードマン、ロールズ、アーレントらの「自由主義」の系譜をたどり、さらにパウロ、アウグスティヌス、ルター、カント、ヘーゲル、アイザリア・バーリン、アマルティア・センにいたるまでの「自由論」を概括しています。
この一冊で、近代哲学/現代思想における「自由論」はひととおり押さえることができます。
でも、「自由主義思想」の系譜を図式的に整理するのには役立ったけど、逆にいうとそれ以上の〝発見〟は特になかったかな。。
それにしても、これだけ多くの思想家の議論を次から次へと解説していく著者の〝整理力〟には敬服いたします。